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ポーラスコンクリートブロックの植生調査

【始めに】

 平成2年に河川が本来有している生物の良好な生育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出する事業を実施するために「多自然型川づくり」の通達がなされました。その流れに沿って法律や制度も下記の様に整備されてきました。
  平成 3年度 「河川水辺の国勢調査」実施要領
  平成 6年度 河川審議会答申「今後の河川環境のあり方について」
  平成 9年度 河川法改正
  平成11年度 環境影響評価法
  平成14年度 自然再生推進法
  平成16年度 景観法
 災害復旧工事においてもコンクリートむき出しの護岸による復旧は、改正された河川法の趣旨から考えてみれば不適当であるとして、平成10年6月に「美しい山河を守る災害復旧基本方針」が策定され、自然素材(石材・木材)や環境保全型ブロック等の環境に配慮した資材が多く使用されてきました。
 このたび「多自然型川づくり」から約15年経過し、個別箇所の多自然から河川全体の営みを視野にいれた多自然へ流れに伴い、平成18年10月13日には「多自然型川づくり」から型を取った「多自然川づくり」の通達がなされ、それに先駆けて平成18年6月に「美しい山河を守る災害復旧基本方針」が改正されています。その改定事項の一つとして、個々の箇所における河川環境の保全・復元の目的を明確にし、その上で、最も適切と思われる工法を選定することを再認識することを意図し、“環境保全型ブロック”という呼称を使用しないこととなりました。
 当社としては、カタログに記載する様な良い現場のみを提示することは避け、原則として納品した全ての現場の事後植生調査を実施して提示し、当社のポーラスコンクリートブロックが、どのような現場のどのような箇所に適しているかご判断して頂きたいと考えております。

【調査現場の選定について】

間知石型 施行写真 今回の調査現場の選定においては、なるべく時間が経過した現場で、尚且つ現場条件が厳しい(縦断勾配が大きい・凍害や転石の危険がある)と思われる箇所を選択することとし、平成11年発生災害で岐阜県飛騨高山方面の納品した全ての現場を調査することとしました。
岐阜県飛騨高山方面は、御嶽山を代表とする中央アルプスに位置し、寒冷地指定を受ける箇所です。その地域で経年変化による植生状況、ブロック変化(凍結融解や破損状況等)を調査しました。

 

 

 

 

 

 

 

(調査No.1)岐阜県下呂市(旧:金山町役場)鹿通川河川災害復旧工事   
 調査日:平成18年10月28日(施工後:約6年8ケ月)

  

○河床に植生が繁茂しており、水流も多様化しており、多自然環境が回復していると思われる。
○日当りが悪い場所ではないが、ブロック全体がポーラスコンクリートであるため、背後地からの吸水で法面上部まで苔が繁茂している。
○余りに苔が繁茂しているため、現場を探す際に見落とすほど周辺景観に馴染んでいた。
○ブロックの変異・破損は見受けなれない。

 

(調査No.2)岐阜県下呂市(旧:金山町役場)力石谷災害復旧工事
 調査日:平成18年10月28日(施工後:約6年8ケ月)

  

○対岸は、農地で地山である。常時水位は殆どなく、魚類は生息していないと思われる。
○景観面においては、コンクリートブロックを設置したとは思えない景観を創出している。
○水流は殆どなく、河床には植生が繁茂している。
〇ブロックの変異・破損は見受けなれない。

 

(調査No.3)岐阜県下呂市(旧:金山町役場)宮前谷災害復旧工事
 調査日:平成18年10月28日(施工後:約6年8ケ月)

  

○田園地帯を横断する小河川で大変日当りが良い現場である。
○河床には植生が繁茂し、みお筋も発生している。
○河床の植生が大変多く発生しているため、ブロック近傍の水際の植生は調査出来なかった。
○法面上部から植生が垂れ下がってきており、天端部の露出を防いでいる。

 

(調査No.4)岐阜県下呂市(旧:金山町役場)黒川4河川災害復旧工事
 調査日:平成18年10月28日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○河床部に寄州が形成されており、河床の多様性が確認出来る。
○大変日当りが良い田園地帯の河川のため、苔等は多く見受けられない。
○河床材料には多くの石材が見受けられるが、転石等でもブロック破損も見受けられない

 

(調査No.5)岐阜県下呂市(旧:金山町役場)中洞線道路災害復旧工事
 調査日:平成18年10月28日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○殆ど常時水位と流速の無い谷沿いの小河川である。
○水際部の植生は、大変多く確認出来た。
○天端上部が舗装で処理されているため、水の循環が難しい模様であることと、日当りが良いため、苔等は発生していなかった。

 

(調査No.6)岐阜県下呂市(旧:金山町役場)氏子谷災害復旧工事
 調査日:平成18年10月28日(施工後:約6年8ケ月)

  

○谷沿いの砂防河川で、常時水位が殆どない。
○水際部には植生と多くの苔が確認出来る。
○水際の植生状態から判断すると出水期には早い流速が予想されるが、ブロック表面に根が確り根付いている様だ。

 

(調査No.7)岐阜県下呂市(旧:金山町役場)室洞線河川災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○寄州が発生しており、ブロックが水際に接して折らず、植生が余り確認出来ない。しかし、寄州には多くの植生が発生しており、生態系に寄与している。
○ 大変日当りが良いようで、苔等の発生も多くは見受けられない。

 

(調査No.8)岐阜県高山市(旧:丹生川村役場)滑谷川河川災害復旧工事
 調査日:平成18年7月3日(施工後:約6年4ケ月)

  

○河床勾配1/25〜1/40程度の河川で、河床には岩が露出している。河床に露出している岩が河床に流れる水を多用化させれおり、水中生物の生育に適していると思われる。魚類ではイワナ・アブラメ、昆虫ではトンボ・カゲロウが生育するとの事で、次回は魚類および生物調査を行いたい。
○植生も多く確認出来、尚且つ背後地のとの景観にとても馴染んでいる。

 

(調査No.9)岐阜県高山市(旧:丹生川村役場)村道大萱線道路災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

   

○右上の写真の見ても確認出来るように、寄州が発生して河床の 多様性は回復している。
○残念ながら水際植生は殆ど見受けられない。
○なぜ、植生が上手く行えなかったと推察するに下記の点が考えられる。
 1.背後地が道路で天端部が舗装されており、水の横断方向の連続性が保たれていない。
 2.裏込コンクリートが打設されているかも知れない。
 3.日当りが良い。 ○河床勾配は1/25程度。
○河床材料は、100mm程度の礫が中心であるが、玉石と位の 200mm前後の石も多く点在するが、転石等による破損は見  受けされない。
○寒冷地であるが、凍結融解による破損や変化も見受けられない。

 

(調査No.10)岐阜県高山市(旧:丹生川村役場)大萱谷川河川災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○上記調査の大萱線道路災害の現場から20m程度上流である。背後地は農地であり、同じ河川でほど同じ場所であるが、明らかに植生状況が異なる。
○背後地からの植生もブロック法面に覆い、また苔も繁茂しているため、田園地帯の景観にとてもマッチしている。

 

(調査No.11)岐阜県高山市(旧:丹生川村役場)瓜田法力線道路災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○背後地が道路で天端部が舗装されている。また裏込めコンクリートを打設されている可能性が高い。
○谷沿いの河川で流速が早く、尚且つ出水期には水位が高いと思われ、植生も水際より少し高い位置で確認出来る。
○水際より上部は苔が繁茂しているが、水際部は早い流速に常に洗われるようでポーラス部がむき出しである。しかし、安全な練り積み構造で吸出しや壁体の変位は見受けられない。

 

(調査No.12)岐阜県高山市(旧:丹生川村役場)村道二俣線道路災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○水際部の植生は確認出来るが少量である。
○法面上部は、完全にブロックが露出した状態である。
○河川法線は直線で流速も速く、土砂堆積傾向でもないように思われる。
○河床部の植生も多く確認出来ない。

 

(調査No.13)岐阜県郡上市(旧:和良村役場)村道下洞戸川災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○山深い山間地での施工実績である。調査日が秋頃でもあり、植生が枯れている。
○周辺景観と良く調和しているが、残念であるが天端コンと小口止め部がコンクリートむき出しで目立っていた。

 

(調査No.14)岐阜県郡上市(旧:和良村役場)真那ケ洞谷災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○大変多くの植生が確認出来、ポーラス部に植物がしっかり根付いている。
○天端上部からの植生が天端コンクリートを隠し、大変良い景観を創出している。
○寄洲や巨石等が河床に混在し、調査時においても多くの魚類を確認した。

 

(調査No.15)岐阜県郡上市(旧:和良村役場)黒落谷第一工区災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ヶ月)

  

○大変多くの苔が繁茂して、良く見ないとブロックとは解からない状態であった。
○水際部は寄せ石が堆積している。
○背後地との連続性が保たれていて、田園景観にとても馴染んでいた。

 

(調査No.16)岐阜県郡上市(旧:和良村役場)厚波川第一工区災害復旧工事
 調査日:平成18年11月4日(施工後:約6年8ケ月)

  

○調査時の流速は山間地ではあったが、比較的穏やかであった。
○大変多くの植生が確認出来、水面を覆う状態であった。
○苔の繁茂状態は大変良く、のどかな自然に良く調査していた。

ポーラスコンクリートブロックの植生調査

1. ブロック安定性
□ 凍結融解について

 納品した現場の多くが寒冷地であり、実績から確認する上では、凍結融解によるブロック破損および変異は全ての現場において見受けられませんでした。

□ 転石による破損

 谷に沿った砂防河川に多く納品し、河床材料から推察しても栗石程度の転石の可能性がある箇所が多いのですが、転石によるブロック破損および変異は全ての現場において見受けられませんでした。

2. 水際の植生
□ 流速の違いによる差異

間知石型 施行写真 縦断勾配・平均流速等、全ての現場において資料を入手しておりまでんので、具体的なデータに乏しいのですが、流速7〜8mに近いような速い流速では、ポーラスブロックの多孔質部分に微粒土砂が堆積せず、余り植生は期待出来ない様です。 (調査No.11を参照下さい)。

 

□ 背後地の違いによる差異

 天端部がアスファルトで舗装されている場合は、背後地が農地や森林に比べ、明らかに植生が少なかった。その理由には下記の点が考えられます。
(1) 天端部からの浸透水の確保が難しいこと。
間知石型 施行写真(2) 構造上、裏込コンクリートが打設してある可能性が高かく、背後地からの通水性が損なわれていること。
(3) 道路沿いのため、日当りが大変良いこと。
(4) 一概には言えませんが、法線が直線になる箇所が多く、流速が早くなりがちで、尚且つ土砂堆積がし辛いこと。 (調査No.5、No.9、No.11、No.12を参照下さい)  特に調査No.9とNo.10の差異を確認下さい。

 

 

3. 周辺景観との調和
□ ブロック表面の意匠について

間知石型 施行写真 当社のポーラスコンクリートは、面周辺部の施されている面取り部を二次加工で全て偶発的に割り落としております。その為、より自然に近い質感があり、人工的な要素は軽減されております。

植生と苔が繁茂する場合について

多くの現場で、水際の植生と法面中部で苔が繁茂しておりました。多孔質で優しい質感のあるポーラスコンクリートに苔が繁茂することで、とても良い景観材料となり、周辺景観に違和感なく溶け込んでおりました。

□ 明度について

間知石型 施行写真 当社のポーラスコンクリートは、単位水量の大変少ない即時脱形方式で生産されており、普通コンクリートに比べ明らかに明度が低くなっています。ブロック自体の明度は5〜6程度で、背後地の草木等の自然界の明度と良く調和しておりました。

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