平成22年8月9日に国土交通省河川局河川環境課・治水課・防災課より、地方整備局および各都道府県へ「中小河川に関する河道計画の技術基準:以下、技術基準」の通達がなされました。通達本文の一部を引用すれば「本通知は、河川全体の自然の営力と自然の営みを視野に入れ、時に猛威をふるう自然の力から生命、財産を守り、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全創出するために、河川砂防技術基準における河道計画のうち、特に中小河川における河道改修の際の河道計画を捕捉し、計画作成に当っての基本的な考え方及び留意事項を取り纏めたものである。(一部省略)本通知を踏まえ、治水対策を効率的・効果的に推進するとともに、課題の残る川づくりの解消と良好な河川環境の形成に努めていただきたい。」とあります。また、この通達内容をより具体的に解説を加えた「多自然川づくりポイントブックⅢ:以下、ポイントブック」が平成23年10月に発刊されました。
技術基準とポイントブックには、護岸の環境上の機能の確保として以下の考え方を示しています。
技術基準とポイントブックには、護岸の環境上の機能の確保として以下の考え方を示しています。
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景観に配慮した天端工に関して
① のり肩・水際部に植生を持つことを原則とし、直接人の目に触れる部分を極力小さくすること。
② -a 周辺景観と調和させること
・護岸の素材が周辺と調和した明度、彩度、
テクスチャーを有していること。
・護岸のり肩、護岸の水際線等の境界の処理は、
目立たず周辺と調和していること。
② -b 植物の生息・生育空間・移動経路の機能を持つこと。
・生物の生息・生育場所や植生基盤となりうる空隙を持つこと(景観にも配慮)。
・生物の生息・生育に適した湿潤状態ののり面を確保するため、透水性・保水性を持つこと。
また、ポイントブックでは天端工に関して、目的と景観性に関する注意事項が具体的に記載されており、本文にも「土木構造物標準設計第2巻(擁壁)には、図 4 29(a)のタイプの天端コンクリートが示されているが、景観に十分配慮しつつ、現場の状況や護岸に求められる機能に応じた工法を採用することが重要である。」と記載されています。
2)第4章 川岸・水際部の計画・設計
■堀込河道を対象とした護岸の天板処理
図 4-29 堀込河道を対象とした護岸天端の処理のタイプ〈(a)、(b)は景観の観点から課題が残る)
堀込河道の護岸の天端コンクリートは、ブロック上部に10cm程度のコンクリートを打タイプ(図 4-29(a))や、天端ブロックの面似合わせて水平に打つタイプ(図 4-29(b))が多いが、これらの場合、護岸のり面も天端もコンクリートで硬い印象になる。
一方、天端コンクリートを天端ブロック上面から少し低い位置に打ったり(図 4-29(c))、あるいは天端コンクリートをなくしたり(図 4-29(d))して、その上面を土で埋め戻した場合は、天端に草が生えてエッジが和らぐ。さらに、これらのタイプには、天端上部の盛り土が流出しにくいというメリットもある。これらの方法は、堀込河道の天端処理において有効である。小さな工夫であるが、川の表情が大きく変わってくる(写真 4-23 参照)。
天端コンクリートを設置する主目的は、天端から裏込め材への水の浸透を防ぐことにある・洪水時に護岸背面に大きな残留水圧が残ると護岸を崩壊させる可能性が高まるため、天端上部からの浸透水を出来る限り防止することが求められる。護岸背後が窪地となっており雨水が集まりやすい場所等、天端上部からの浸透水の確実な防止が必要とされる場合には(図 4-29(c))のタイプわ選定することが望ましい。
一歩で、護岸に植生を生育させたり、生物の生息・成育に適した湿潤状態を確保したりする場合には、平常時に護岸背後から十分な水分が供給されていることが求められる。洪水時の天端上部からの浸透水による義眼崩壊の危険性が低い場所においては、(図 4-29(d))の選定が可能であり、平常時の護岸背面からの水分供給のため、護岸背後の土壌からに加え、天端上部からの雨水による水分補給も期待できる。
土木構造物標準設計第2巻(擁壁)には、(図 4-29(a))のタイプの天端コンクリートが示されているが、景観に十分配慮しつつ、現場の状況や護岸に求められる機能に応じた工法を採用することが重要である。
実際の施工実績においても景観性を重視するため、全面に露出する天端コンクリートの厚み10cmを無くした図 4 29(b)、もしくは図 4 29(c)の実績は大変多いです。